はあちゅう「仮想人生」の続編はあるのか?物語最大の謎を考えてみる
なかなか面白い話で、話題に尽きませんね。
本の内容や感想は下記の記事で書いています。
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ドラマ化しても面白いなという作品。
今回はこの仮想人生に果たして続編は出るのかどうかを考えてみたい。
ネタバレするので、これから読もうとしている人は注意してください。
まだ読んでいない方はこちら。
続編が出るかどうかを考えることによって、一番の問題となるのは恭平がどうなったかだろう。
突如、ユカの前から失踪した恭平。
しかも3か月経っても姿を現さないまま物語は終わったのだ。
続編が出るとしたら、この恭平がユカの前に現れることから始まるはずだ。
それが1年後あるいは数年後かもしれない。
ということは、恭平の行方の謎を解けば、答えが見えてくるかもしれないということ。
そこで、今回は恭平の謎を解くために物語を繰り返し読んでみて、考えてみた。
それはどこかにヒントが隠されているのではないかということだ。
はあちゅう「仮想人生」の続編はあるのか?物語最大の謎を考えてみる
最後のシーンから
まずは最後のシーンを振り返ってみたい。
3か月経って弁当屋で働き始めたユカ。
裕二とセックスはしていないが添い寝までする親密な関係となった。
3か月経って、裕二は本当の恭平の仕事をユカに伝えたわけだ。
「恭平が、お客さんの誰かとトラブっていた話とかはある?どんなに小さなことでもいいんだけど」
「ないです。お客さんの話は、あんまりしないんですよね」
引用:はあちゅう「仮想人生」(幻冬舎)
このユカと裕二の会話からもわかるのだが、お客さんとのトラブルという線はないのかだ。
一番、可能性が高いといってもいいのではないだろうか。
特に恭平は本当の姿をユカにも見せない人だった。
裕二に対しても、本当の姿を見せていないのかもしれない。
裏で何かやましいことやトラブルがあっても口に出さないだろう。
この真意を確かめるにはとりあえず裕二のストーリーを見ていく必要がある。
海外へ逃亡した?
恭平がいなくなって間もない裕二のストーリーから。
誰かを裏切ることだって、やろうと思えば簡単に出来るんだろう。
引用:はあちゅう「仮想人生」(幻冬舎)
恭平が失踪ということで、裏切られた裕二。
簡単に裏切るということは誰にでも出来るということ。
恭平は裕二を裏切ったのは事実かもしれない。
でも、この裏切りは恭平の愛のムチだったのかもしれない。
というのは・・・。
デリバリーホストの会社を自分で作っちゃえばいいんじゃないの。
引用:はあちゅう「仮想人生」(幻冬舎)
裕二は完全に恭平に依存していた。
誰かに依存することの最大のデメリットはその誰かがいなくなること。
これはユカの状況とも同じ。
ユカは恭平に依存し過ぎていた。
依存せずに自立しようという著者のメッセージとも取れる部分である。
失踪した理由まではわからないが、
誰かを依存する人生のリスクってものがわかるところだ。
そしてひとつのヒントを見つけた。
日本以外の国の発展はすごいらしい。
この国には、わざわざ住んで学ぶだけの魅力的なものがあるんだろうか。
引用:はあちゅう「仮想人生」(幻冬舎)
これは裕二のストーリーの中の一文。
ちょっと面白い。
裕二よりはるかに上をいく恭平だったら、この思考を既に超えているのではないか。
つまり、恭平は海外へ行ったのではないだろうか?
すべてを捨てて海外へ行くという選択肢もありそうな気がする。
しかし、何も持たずに海外へ行くなんてことはあるだろうか。
ましてや結婚もしていて妻もいる。
あってもおかしくないシチュエーションではあるが現実味がなさそうな気もする。
仕事はもう限界だった
裕二のさらに前のストーリーを見てみたい。
ここにけっこう大きなヒントが隠されていた。
ホストが店をすっ飛ばして客と直接やりとりをしてしまうことを防ぐためだろう。
たまにそういうやつがいるけれど、必ず後でトラブルになる。
引用:はあちゅう「仮想人生」(幻冬舎)
裕二と恭平の半年に一度の面談に対しての一文だ。
これを読むと、客とのトラブルを起こしてしまう人は少なからずいるということがわかる。
ストーカー化する客が実際にいるのは確かだろう。
恭平が同じような目に遭うことも可能性としては否定できない。
そしてこの後の恭平の言葉が一番の理由に近いのか。
「ちょっと俺も体力きつかったから助かった。最近、酒飲むと勃ちが悪いんだよなぁ」
引用:はあちゅう「仮想人生」(幻冬舎)
これは客がキャンセルした時の恭平の言葉だ。
ここでわかるのだが、恭平はこの仕事を続けるに対して末期だということ。
体力も性欲も衰えているわけだ。
少なからず、仕事を近いうちに辞めるのではないかということがわからなくもない。
そして裕二との会話にこんなのがある。
ずっとここにいたいという気持ちと反発するように、
ここから逃げ出したいという気持ちやこんなはずじゃなかったって気持ちが沸き上がるのが俺にとっての幸せなんだよな」
引用:はあちゅう「仮想人生」(幻冬舎)
ここで営業トークだといい、冗談ぽく済ませたが、
これは本音だろう。
少なからず、この仕事から逃げ出したいという気持ちがあったことがわかる。
そしてトドメはここだ。
ブロックというのは死刑執行感がある。
タップするだけでそいつが目の前から跡形もなく消えるのは快感だ。
現実もこんなふうになってくれればいいのに。
引用:はあちゅう「仮想人生」(幻冬舎)
Twitterでは簡単にできるブロック。
しかし、これが現実であると・・・。
恭平は誰かに現実世界でブロックされてしまったということだろうか。
連絡出来ない理由
裕二の部分である程度、失踪の理由がわかるような気がしてくる。
しかし、本質の部分でいうと、愛のストーリーの方がリアルではないだろうか。
愛は裕二だと思われるデリバリーホストを利用している。
そこでもう利用しないし、高くつくなどマイナスポイントが多くみられる。
この物語での一番の経験者でもあり、著者の思いが詰まっているのではないかと感じられる。
もしかしたら、愛は恭平とも寝たことはあるのだろうか。
デリバリーホストを何度か利用しているというあたりは気になるところでもある。
そして物語の後半でこんな一文もある。
なんだかんだでセックスって面倒くさいってことに気づいてしまう。
セックスの楽しさにはそれと同じくらい面倒がつきまとうのだ。
引用:はあちゅう「仮想人生」(幻冬舎)
これはもう一歩も先を行く考えと言っていいのではないだろうか。
私も年齢が近いのでちょっとわかってしまうところでもあるのだが、
恭平の体力の低下や勃ちが悪くなったという部分は愛の面倒くさいというところに近いものを感じる。
また、愛は過去にストーカー被害にあったり、婚約者にフラれたりした人生を歩んでいる。
42歳の愛の過去は、33歳であるユカの今に近いのではないだろうか。
そして八代と距離を縮めていく愛の核心をつく部分がある。
連絡もなしに私のもとを去るだろうか。
連絡出来ない理由があるんだろうか。
引用:はあちゅう「仮想人生」(幻冬舎)
これは愛が八代から連絡が一時的に途絶えてしまった時のことだ。
「連絡」「理由」というワードからユカと恭平の状況に非常に似ている。
恭平も連絡なしに理由もわからずにユカの前から消えたわけだ。
八代の場合は敢えて相手の気を引くために恋愛テクニックを使ったというのだ。
この恋愛テクニックが画家であるナオから学んだものだという。
ナオがTwitterで鉄平から学んだものってことですね。
つまり、可能性として恭平は敢えて身を引いたのかということだ。
この線はなくはないのだろうか。
ユカが鉄平と寝たという事実を恭平はどこかで知ったかもしれない。
しかし気を引くために3か月は長いし、ましてや結婚しているということを考えるとこれも浅いだろう。
普通の子がいい
あとセックスしたから、好きになるっていうのは女の人の発想です。
男はもっと割り切ってますよ。
引用:はあちゅう「仮想人生」(幻冬舎)
これは裕二がユカに話したセリフの一文。
裕二は能天気な普通の子がいいとも話している。
Twitterという世界に入りこんでしまったユカは普通の子じゃなくなったのだろうか。
裕二とユカは一線は超えていないし、友達以上にはならない雰囲気でもある。
恭平も裕二と同じで普通の子が良かったのではないだろうか。
だとしたら、恭平は普通の子と不倫でもしてしまったという線もあるのだろうか。
これまた浅はかでもある気がする。
まとめ
いろいろ最大の謎を考えてみたが、核心を突くような答えは見つからなかった。
つまり、これは続編も作ることができるような設定とも言えるのではないか。
恭平の失踪理由は私としてはTwitterの裏アカウントが絡んでると感じる。
この物語には恭平のアカウントが出てこない。
しかし、実際は恭平のアカウントは存在しているはずだろう。
それは裏アカウントであり、誰かともしかしたら繋がっているかもしれない。
そして、「恭平が突然消えた」という事実は、
非現実的に考えれば、Twitterのブロックで消されるのと同じことが現実の世界で起こったということ。
Twitterでは簡単に消すことができるが、
現実世界では簡単に人は消せない・・・のだろうか。
突如、人が消えることだってあるかもしれない。
そんなミステリーのような出来事がユカの前で起こったということ。
Twitterで起きてることにも現実味はあるもの。
そして最後に恭平が失踪することによって、
裕二とユカは誰かに依存するのではなく、独り立ちするという新しい一歩を踏み出せたように感じる。
物語としては完結しているようにも思える。
続編はないかもしれないが、アナザーストーリーとして恭平の物語があっても面白いかもしれない。
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