飲食店での最強の敵を忘れてはいけない
※当記事は@tatsuya_koboriさんの企画3000文字チャレンジの記事となっています。
駄文ですがご了承ください。
企画アカウントや詳細はこちらで確認しよう。
あれは春の陽射しが心地よい時期のことだった。
入社して1年目。
というか、もうすぐ2年目。
新入社員が新たに入ってくる時期だった。
ちょうど過ごしやすく気持ちの良い温度。
そんな日の午後は同期の友達と〇×をしていた。
そう、まさかの仕事中だった。
まさか、社会人になって仕事中に土に「#」と書いて〇と×を付け合う日が来るとは思っていなかった。
大の大人が何度も土を消しながら〇×をするのだ。
もちろん、仕事中のことだった。
〇×ゲームっていつ覚えたのだろうか。
小学校の時だっただろう。
〇と×を書く単純なゲームではあるが、はまってしまう。
最初の一手でだいたい決まるといってもいいのだろうが、
勝ち方を理解しているようで理解できなかったりしていた。
今だったら、ググればすぐ出てくるんだろうな。
でもそれでは面白くないよね。
当時、流行っていたゲームと言えば、他には物差しを鉛筆で飛ばすゲーム。
中学くらいになるともっと高度な10円玉サッカーが流行り始めた。
さらに高校生になると、花札や自作のサイコロ競馬ゲームなんかをやってたっけか。
しかし、そういったゲームは廃れは早かった。
そう、社会人になっていまだにしたことないのだ。
〇×ゲームに飽きると、次にやるのといったら棒倒しだろう。
大学を卒業した20代の社会人が砂を使って棒倒しをしているのだ。
それはもう周りから見たらどんな光景だろうか。
大丈夫、そこには誰もいないし、見られていないから。。。
恥ずかしがることはない。
もし誰かが現れようならば、作業に戻ればいいだけだ。
そう、草むしりという作業に。
夕方16時くらいになると決まって草むしりをしていた。
いや、していたというかさせられていたのだ。
回転寿司店に入社したのに、「なぜ?」と思うだろう。
実は正月を終えると回転寿司店は一気に暇になるのだ。
当時はさほど人手不足ということはなかった。
なんといっても就職氷河期でしたからね。
新入社員なんて辞めたところで、また多く入ってくる。
つまり人に余裕があるということだ。
だから、私を含む新入社員の多くは工場に配属されてしまったのだ。
工場では寿司ネタを切ったり加工したりという作業を行うのだ。
ただ、暇な時期になると仕事がなくなる。
工場は生産量が決まっている。
生産調整のために有給を取得するなんてこともあった。
もはや店舗とは全く違うホワイトな職場でもあったのだ。
もちろん工場は土日はお休みだ。
平日の朝8時から17時までが仕事。
休憩が1時間だ。
そして当時は独身なので寮住まい。
職場までは車で15分程度。
朝起きるのは辛かったが17時には仕事が終わるのだ。
毎日が暇でしょうがなかったくらいだ。
というのも店舗だと日付が変わる頃まで働くこともしばしば。
17時から何をすればいいのかわからなかったくらいだ。
そんな生活の唯一の救いは同期と一緒に働けることだった。
前の店舗から仲良かった〇×を共にしていた友達はあれから15年以上経ったが、
いまだに時々会っているくらいだ。
共に仕事は転職していて変わりはしたが。
そんな工場生活の中で草むしりは本当に退屈でもあった。
工場の脇にあるような草をひたすら1時間むしるのだ。
数日続けていると、さすがに飽きてきてゲームを始めるというわけだ。
それでも雑草はまた生えてくる。
仕事を与えてくれるのだ。
「除草剤撒けばよくないか?」とか思うかもしれないが、
雑草だけじゃないからそうもいかないところだ。
しかし、よく考えてみたい。
なんと草むしりをしていて、お金が貰えるんだぞ。
月給20万とか草むしりして貰ってもいいのだろうか?
「なんておいしい仕事なんだ!」とよく思っていた。
もはやそこに飲食店の基礎も何もないし、学習の要素なんてなかったのかもしれない。
接客を離れることにより、逆に店舗に戻るのが憂鬱になるくらいだ。
というのも私は実は草むしりが好きだったりする。
話は子供の頃に戻る。
私は小さい頃は団地に住んでいた。
団地では月に1度くらいで草むしりをする日があるのだ。
決まってそれは日曜日だった。
もう幼稚園の頃からだろう参加していたのは。
もちろん、母や兄弟と一緒に草むしりをする。
草むしりは午前中に始まりだいたい3時間くらいだ。
しかし、なぜだか私はこれが嫌いではなかった。
むしろ好きだったのだ。
もちろん、まだ子供だったので、草むしりをしながら、
ダンゴムシやアリなどといちゃいちゃ遊ぶこともあっただろう。
特にアリの巣は何かいたずらをしてしまうのは仕方のないところ。
ここまで草むしりを頑張れたのはなんといってもご褒美の存在だ。
草むしりを最後までやるとジュース1本あるいは2本貰えるのだ。
今、思えば3時間で200円程度。
時給に換算したら・・・なんて思ってしまうところだろう。
それでも草むしりで疲れた後に飲むジュースは格別の味だった。
それこそその場で飲むジュースの価値は1000円くらいには跳ね上がってるのではないかというところ。
こんな経験があったから、草むしりはただ同然の作業。
仕事ではないという頭が私の脳裏にしっかりと刻まれていたのだ。
でもなぜか大人になると、草むしりをすればお金が貰えるのだ。
それこそジュース何本飲めるんんだというくらいのお金でもある。
こんなことでお金が貰えるのか・・・。
当時の私にはちょっとしたカルチャーショックを受けたくらいだ。
さらには草むしりをしてるフリして〇×ゲームや棒倒ししている時間さえお給料が入ってしまうなんて・・・。
ちょっとした罪悪感を・・・感じるわけもなかった。
しかし、当時の私にはこの後も、何十年に渡って戦う相手だとは知る由もなかった。
GWが明けたくらいの5月にようやく店舗に戻ることとなった。
工場でのつまらない生活で少し太ったくらい、鈍っていたのだが、
店舗では主任という立場で仕事をすることとなる。
郊外の店舗というのは非常に広い。
駐車場も広く、私が働くことになった店舗は地域の店舗でも一番の敷地があったくらいだ。
店舗には一定の面積で緑がないといけない。
これは法律で決まっている。
つまり、敷地が広ければ広いほど、植木の数も多くなるのだ。
となると、草むしりをしなければいけない面積がやたら広いということになる。
店舗には一定の周期でエリアマネージャーと呼ばれる店長よりも上の上司が臨店する。
その際に注意されるのが、
「雑草が多い!草むしりをしろ!」だ。
もちろん、これは定期的な監査でも引っかかるので上司もうるさく言うわけだ。
工場と違い、店舗では呑気に草むしりをすることはできなかった。
というのも、店舗は常に営業をしていて、回転寿司のレーンなんてのは一日中回ってるのだ。
それでも草むしりをする時間を作ってやらなければいけなかったわけだ。
A、B、C、Dと場所があるとしたら順番に毎日草むしりをすることになる。
しかし、Dの場所が終わった頃には、Aには再び雑草が芽生えているのだ。
つまり、季節が秋になるまではエンドレスに続くということだ。
そしてこの草むしりは毎年のように私たちの前に立ちはだかることとなる。
もちろん、私は草むしりをすること自体は嫌いじゃない。
むしろ好きな方だ。
それでも店舗の草むしりは事情が変わってくる。
2年後に店長になった時にそれはまた新たな答えを導きだすことともなる。
草むしりを嫌がるパートやアルバイトは非常に多い。
草むしりをお願いすると「え~~~~!!」ていう人がほとんどだ。
「店長がやってくださいよ」と言われることすらあった。
うん、もちろん喜んでやりますよ。
「そのかわり、お店お願いね」となってしまうのだ。
信頼できるリーダー的存在がいる時間などはそういった形で自分がやることも多かった。
「店長」をやるより「草むしり」をしている方がはるかに気が楽なのはおわかりだろう。
草むしりをするだけでお金が貰えるのにやりたがらないバイトは不思議だなと思うところだ。
ただ店長になるとほぼほぼ固定給だったりするので、あまりメリットを感じなくなるものだ。
そんな風に毎年春になると湧き出てくる最強の敵「雑草」。
きっとクリボーやノコノコくらいのレベルもないかもしれないが、
雑魚も数集めれば強くなるということだろう。
そんな最強の敵もここ5年くらいは姿が減ってきた。
そう、植木にネットを張ったり砂利を撒いたりし始めたのだ。
それを見るたびにあの頃の苦労は何だったんだ・・・と思いたくなる。
いやいや、あの経験があるから今があるんだ、と自分に言い聞かせよう。
「雑草」と過ごした日々を忘れたら「雑草」にも失礼ではないか。
3000文字チャレンジ公式アカウント
駄文ですがご了承ください。
企画アカウントや詳細はこちらで確認しよう。
あれは春の陽射しが心地よい時期のことだった。
入社して1年目。
というか、もうすぐ2年目。
新入社員が新たに入ってくる時期だった。
ちょうど過ごしやすく気持ちの良い温度。
そんな日の午後は同期の友達と〇×をしていた。
そう、まさかの仕事中だった。
まさか、社会人になって仕事中に土に「#」と書いて〇と×を付け合う日が来るとは思っていなかった。
大の大人が何度も土を消しながら〇×をするのだ。
もちろん、仕事中のことだった。
〇×ゲームっていつ覚えたのだろうか。
小学校の時だっただろう。
〇と×を書く単純なゲームではあるが、はまってしまう。
最初の一手でだいたい決まるといってもいいのだろうが、
勝ち方を理解しているようで理解できなかったりしていた。
今だったら、ググればすぐ出てくるんだろうな。
でもそれでは面白くないよね。
当時、流行っていたゲームと言えば、他には物差しを鉛筆で飛ばすゲーム。
中学くらいになるともっと高度な10円玉サッカーが流行り始めた。
さらに高校生になると、花札や自作のサイコロ競馬ゲームなんかをやってたっけか。
しかし、そういったゲームは廃れは早かった。
そう、社会人になっていまだにしたことないのだ。
〇×ゲームに飽きると、次にやるのといったら棒倒しだろう。
大学を卒業した20代の社会人が砂を使って棒倒しをしているのだ。
それはもう周りから見たらどんな光景だろうか。
大丈夫、そこには誰もいないし、見られていないから。。。
恥ずかしがることはない。
もし誰かが現れようならば、作業に戻ればいいだけだ。
そう、草むしりという作業に。
夕方16時くらいになると決まって草むしりをしていた。
いや、していたというかさせられていたのだ。
回転寿司店に入社したのに、「なぜ?」と思うだろう。
実は正月を終えると回転寿司店は一気に暇になるのだ。
当時はさほど人手不足ということはなかった。
なんといっても就職氷河期でしたからね。
新入社員なんて辞めたところで、また多く入ってくる。
つまり人に余裕があるということだ。
だから、私を含む新入社員の多くは工場に配属されてしまったのだ。
工場では寿司ネタを切ったり加工したりという作業を行うのだ。
ただ、暇な時期になると仕事がなくなる。
工場は生産量が決まっている。
生産調整のために有給を取得するなんてこともあった。
もはや店舗とは全く違うホワイトな職場でもあったのだ。
もちろん工場は土日はお休みだ。
平日の朝8時から17時までが仕事。
休憩が1時間だ。
そして当時は独身なので寮住まい。
職場までは車で15分程度。
朝起きるのは辛かったが17時には仕事が終わるのだ。
毎日が暇でしょうがなかったくらいだ。
というのも店舗だと日付が変わる頃まで働くこともしばしば。
17時から何をすればいいのかわからなかったくらいだ。
そんな生活の唯一の救いは同期と一緒に働けることだった。
前の店舗から仲良かった〇×を共にしていた友達はあれから15年以上経ったが、
いまだに時々会っているくらいだ。
共に仕事は転職していて変わりはしたが。
そんな工場生活の中で草むしりは本当に退屈でもあった。
工場の脇にあるような草をひたすら1時間むしるのだ。
数日続けていると、さすがに飽きてきてゲームを始めるというわけだ。
それでも雑草はまた生えてくる。
仕事を与えてくれるのだ。
「除草剤撒けばよくないか?」とか思うかもしれないが、
雑草だけじゃないからそうもいかないところだ。
しかし、よく考えてみたい。
なんと草むしりをしていて、お金が貰えるんだぞ。
月給20万とか草むしりして貰ってもいいのだろうか?
「なんておいしい仕事なんだ!」とよく思っていた。
もはやそこに飲食店の基礎も何もないし、学習の要素なんてなかったのかもしれない。
接客を離れることにより、逆に店舗に戻るのが憂鬱になるくらいだ。
というのも私は実は草むしりが好きだったりする。
話は子供の頃に戻る。
私は小さい頃は団地に住んでいた。
団地では月に1度くらいで草むしりをする日があるのだ。
決まってそれは日曜日だった。
もう幼稚園の頃からだろう参加していたのは。
もちろん、母や兄弟と一緒に草むしりをする。
草むしりは午前中に始まりだいたい3時間くらいだ。
しかし、なぜだか私はこれが嫌いではなかった。
むしろ好きだったのだ。
もちろん、まだ子供だったので、草むしりをしながら、
ダンゴムシやアリなどといちゃいちゃ遊ぶこともあっただろう。
特にアリの巣は何かいたずらをしてしまうのは仕方のないところ。
ここまで草むしりを頑張れたのはなんといってもご褒美の存在だ。
草むしりを最後までやるとジュース1本あるいは2本貰えるのだ。
今、思えば3時間で200円程度。
時給に換算したら・・・なんて思ってしまうところだろう。
それでも草むしりで疲れた後に飲むジュースは格別の味だった。
それこそその場で飲むジュースの価値は1000円くらいには跳ね上がってるのではないかというところ。
こんな経験があったから、草むしりはただ同然の作業。
仕事ではないという頭が私の脳裏にしっかりと刻まれていたのだ。
でもなぜか大人になると、草むしりをすればお金が貰えるのだ。
それこそジュース何本飲めるんんだというくらいのお金でもある。
こんなことでお金が貰えるのか・・・。
当時の私にはちょっとしたカルチャーショックを受けたくらいだ。
さらには草むしりをしてるフリして〇×ゲームや棒倒ししている時間さえお給料が入ってしまうなんて・・・。
ちょっとした罪悪感を・・・感じるわけもなかった。
しかし、当時の私にはこの後も、何十年に渡って戦う相手だとは知る由もなかった。
GWが明けたくらいの5月にようやく店舗に戻ることとなった。
工場でのつまらない生活で少し太ったくらい、鈍っていたのだが、
店舗では主任という立場で仕事をすることとなる。
郊外の店舗というのは非常に広い。
駐車場も広く、私が働くことになった店舗は地域の店舗でも一番の敷地があったくらいだ。
店舗には一定の面積で緑がないといけない。
これは法律で決まっている。
つまり、敷地が広ければ広いほど、植木の数も多くなるのだ。
となると、草むしりをしなければいけない面積がやたら広いということになる。
店舗には一定の周期でエリアマネージャーと呼ばれる店長よりも上の上司が臨店する。
その際に注意されるのが、
「雑草が多い!草むしりをしろ!」だ。
もちろん、これは定期的な監査でも引っかかるので上司もうるさく言うわけだ。
工場と違い、店舗では呑気に草むしりをすることはできなかった。
というのも、店舗は常に営業をしていて、回転寿司のレーンなんてのは一日中回ってるのだ。
それでも草むしりをする時間を作ってやらなければいけなかったわけだ。
A、B、C、Dと場所があるとしたら順番に毎日草むしりをすることになる。
しかし、Dの場所が終わった頃には、Aには再び雑草が芽生えているのだ。
つまり、季節が秋になるまではエンドレスに続くということだ。
そしてこの草むしりは毎年のように私たちの前に立ちはだかることとなる。
もちろん、私は草むしりをすること自体は嫌いじゃない。
むしろ好きな方だ。
それでも店舗の草むしりは事情が変わってくる。
2年後に店長になった時にそれはまた新たな答えを導きだすことともなる。
草むしりを嫌がるパートやアルバイトは非常に多い。
草むしりをお願いすると「え~~~~!!」ていう人がほとんどだ。
「店長がやってくださいよ」と言われることすらあった。
うん、もちろん喜んでやりますよ。
「そのかわり、お店お願いね」となってしまうのだ。
信頼できるリーダー的存在がいる時間などはそういった形で自分がやることも多かった。
「店長」をやるより「草むしり」をしている方がはるかに気が楽なのはおわかりだろう。
草むしりをするだけでお金が貰えるのにやりたがらないバイトは不思議だなと思うところだ。
ただ店長になるとほぼほぼ固定給だったりするので、あまりメリットを感じなくなるものだ。
そんな風に毎年春になると湧き出てくる最強の敵「雑草」。
きっとクリボーやノコノコくらいのレベルもないかもしれないが、
雑魚も数集めれば強くなるということだろう。
そんな最強の敵もここ5年くらいは姿が減ってきた。
そう、植木にネットを張ったり砂利を撒いたりし始めたのだ。
それを見るたびにあの頃の苦労は何だったんだ・・・と思いたくなる。
いやいや、あの経験があるから今があるんだ、と自分に言い聞かせよう。
「雑草」と過ごした日々を忘れたら「雑草」にも失礼ではないか。
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